
家庭用/事業用レーシングシミュレーター用のデバイスの終着点といっても過言ではないのがモーションコックピットであります。当記事ではモーションコックピットとはどういうものか、その利点について述べ、導入を検討している人に向けて、アクセスのモーションコックピットの特長を(アクセスドライバーである武藤が)解説します。
経歴
eスポーツ
2014年:iRacingを始める
2018年:SRFC WERC (中国)
2019年:ADAC SIM EXPO出場(ドイツ、 ニュルブルクリンク)
ERS2位(中国)
2020年:Access Racing Simulator Cup 2020 1位
2021年:Access Racing Simulator Cup 2021連覇
Wi 11 iams Esports(現Williams Sim Racing)に加入
2022年: Suzuka eSports Chai lenge Raceシリーズチャンピオン
FIA Motorsports Games 2022出場8位 (フランス)
インタープロトeシリーズ(IPeS)特別戦 優勝
2023年:SRO Esports Asia Sprint シリーズ5位表彰台2回
2024年:FIA Motosports Games世界4位(フランス)
lndycarButtkicker Pro Series出場 (オンライン世界大会)
2025年:UNIZONE名古屋OJAより参戦
開幕戦:スプリント①、 スプリント②、 耐久レース優勝
現在ランキング1位
リアルレース
N-ONE OWNER'S CUPにて四輪デビュー
・もてぎラウンド3位
・十勝ラウンド4位
岡山ChallengeCUP 2H耐久Race
・クラス優勝(N0-86クラス)
2022年:スーパー耐久出場(富士24H、 菅生)
2024年:スーパー耐久出場 (茂木、 富士)
2025年:スーパー耐久出場
フェラーリチャレンジスポット参戦
・何のため、誰のためのモーションコックピットか?
まず、よくある論争の一つとして、モーションコックピットは必要か?というものがあります。「モーションは邪魔」、「速く走れるわけではない」、などと聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、価格についてはさておき、モーションコックピットの導入について否定的な意見としてよく聞かれる点は、導入しても速くならないこと、再現度には限界があること、走りづらさや違和感を覚えることなどです。
実際のところ、ほとんどのすべてのシムレーサー/eスポーツドライバーはモーションコックピットを使用していません。高価だから…とはいえ、最近はモーター、ペダルなどは数十万円するものも珍しくなく、常にコンマ1秒を求めているドライバーなら、少しでも速く、アドバンテージを得ることができるのならば、金額を気にすることなく導入するでしょう。(そんなデバイスがあれば私もすぐに欲しいくらいです)
確かにモーションコックピットはシミュレーターでの速さにつながりません。経験あるシムレーサーは身体で感じる必要なく挙動をつかむことができますし、振動や前後左右にシートが動くと、細かいペダルコントロールは阻害されますし、長いレースでは疲れてしまいます。
シムレーサーにとっては「モーションは邪魔」、「速く走れるわけではない」は的を射ています。
ですが、リアルはどうでしょうか。
体はあらゆる方向に揺さぶられ、振動します。モーションコックピットのように。
モーションコックピットの最大の利点はシムをリアルに近づける最後にして最大のピースである点であり、それゆえにモーションコックピットはリアルのための練習という条件において、なくてはならないデバイスであります。
リアルが中心のドライバーにとっては、普段感じている姿勢のモーメントや振動などの情報により自身の感覚のずれや違和感を減らし、効率よくシミュレータートレーニングをすることができます。
その一方でeスポーツドライバーは普段は視界やハンドルのFFBからの情報をもとに操作していますが、振動や姿勢変化などを身体で感じる情報も得られるようにする練習ができ、振動や動きで正確な操作を阻害されるが、それに慣れておくことができます。
といったようにどちらの場合でも、シミュレーターをよりリアルに近い状況で練習をすることが可能になります。
・アクセスのモーションコックピットの特長
走行中のドライバーが身体で感じるものは前後方向、横方向、垂直方向の重力加速度(G)、ピッチ、ロール、ヨーの姿勢、前後タイヤのスライド感などがあり、モーションコックピットはシミュレーターソフト側から送られてくるこれらのデータからシリンダーを動かしてコックピットの動きを制御させています。
まず、重力加速度はリアルではドライバーが受ける一番大きな力です。加減速や旋回中にはGが発生し、遠心力を感じるところです。
しかしながら、Gを家庭用のモーションコックピットで再現することは非常に難しく、非現実的な挙動や感覚になりがちです。(もし正確に再現しようとしたら相当広いスペースを用意する必要があります。)
そのためアクセスのモーションコックピットでは主に車の姿勢(ピッチ、ロール、ヨー)をドライバーに体感させることを重視していると感じます。車の姿勢については限られたスペースの中でも違和感少なく再現することが可能です。
ピッチとロールについてはコックピットの四隅とシートについているシリンダーで再現しています。
シートが動くというのはリアルではシートポジションが変わるという非現実的な動きであります。しかし、違和感ない程度にシートを動かすことによりGで体感する分の情報を補い、姿勢や挙動を体感しやすくなります。(脳に錯覚させているような感覚)動き方の調整幅も広いため、不自然さを軽減させつつ、車種やドライバー自身の感覚に合わせることができます。
私がアクセスモーションコックピットの最大の特長と考えるところはヨーの再現です。
前後についたシリンダーとローラーにより車体のヨーを体感することができます。
ヨーをコントロールすることはリアル/シミュレーター問わず速く走るということにおいて必須の技術となり、どのようなハンドル、ペダル操作をすることでヨーがうまく出せたかを身体で感じることにより、リアルに近く、効率よくシミュレータートレーニングをすることができます。
先述の「モーションは邪魔」、「速く走れるわけではない」という意見はセッティングにより解消/軽減をすることができます。邪魔と感じるのはドライバーの感覚とコックピットの動きがリンクしないと感じるときに起こり得るものだと思います。アクセスの設定ソフトは非常に項目が多く、車の特性に合わせて、調整することができます。先日、この調整を実際にやってみたところ1時間ほどで満足いく動きにすることができました。少し時間はかかりますが、低速コーナー進入~中間でリアが動く感覚を得やすくなりました。
以上、アクセス製モーションコックピットの特長をご紹介しました。
モーションコックピットはリアルを見据えた練習をする際に有用なデバイスです。
特にヨーの再現が可能なアクセス製モーションコックピットはスポーツドライビングにおいて肝になるブレーキングからターンインの車体の姿勢を再現することが可能なため、ドライビング技術向上の大きな助けとなります。
ぜひ一度店舗や全国各地にあるシミュレーターショップで体感していただけますと幸いです。
武藤壮汰